はじめに

世の中には時代とともに変化してゆくものと,時代を問わず変わらないものとがあります。TOEFL®(Test of English as a Foreign Language)について言えば,Reading はペーパーテスト,Listening はテープレコーダーを使っての一斉受験というPBT(Paper-Based Testing)のアナログ世代から,コンピュータを利用したCBT(Computer-Based Testing)へ,さらにはiBT(Internet-Based Testing)のデジタル世代へと,出題形式は大きく変わりました。同じTOEFL® でも,まったく別物のテストになったようにさえ思えます。

しかし,その一方で,現在のTOEFL iBT® でハイスコアを得るために必要な学習の内容や方法も一変してしまったかと言えば,けっしてそうではありません。PBT の問題がTOEFL ITP®(Institutional Testing Program)として再利用され,英語力測定の目的で今も広く実施されている事実は,留学に必須の ̶ そして国際舞台で英語を使いこなすために必要な ̶ 高度な英語力を身につけるためのコンテンツがPBT の時代と本質的には変わらないことを物語っています。ITP(=PBT)とiBT のスコアには高い相関関係があると実証されていることもその強力な証左です。

本書はTOEFL ITP® のSection 2: Structure and Written Expressionの対策用に,質量ともに十分な模擬問題を提供する目的で企画されました。Section 2 で問われる文法・構文・語法の知識は,TOEIC® や日本の大学入試で出題される英語問題と決定的な違いがあるわけではありませんが,いざ解いてみるとはるかに難しく感じられるでしょう。最大の理由は語彙と,文意の質的ギャップです。TOEFL® はアメリカの大学・大学院での授業で必要とされる英語力の有無をみるのが本来の眼目ですから,そこで扱われる英文が,文法セクションといえども,アカデミックな内容になるのは当然です。

本書では,英米の大学教養課程の教科書や参考書,インターネット上の学術記事などから広く用例を採取し,TOEFL ITP® Section 2 の形式に合わせて模擬問題を作成しました。実際の試験では【Structure 15 問+ WrittenExpression 25 問】の合計40 問を25 分間で解くことが求められます。本書には本試験12 回分に相当する480 問(12 セット)を収録し,解答・解説を加えました。加えて,必修パターンを大きく7つに整理してまとめた出題項目別練習問題を100 問用意し,総計580 問と,Section 2 の対策としては十分なボリュームの問題集に仕上がったものと自負しています。本書を征服することで,利用者の皆さんがTOEFL ITP® で高スコアを獲得されるとともに,さらにハイレベルな英語力へと飛躍する一助となることを願ってやみません。

模擬問題の編集に当たっては優秀なネイティブ・スタッフの全面協力を得て,TOEFL ITP® と同等の難易度,質的完成度を持つ問題に仕上げることができました。この場を借りて厚く謝意を表します。また,語研編集部の奥村民夫氏には,企画から校正に至るまで文字どおりあらゆる面で助言と支援をいただきました。著者独力ではとうてい不可能な内容の豊富さと充実度を達成できたのは,ひとえに奥村氏を始めとする編集部スタッフのご援助のおかげです。重ねて心よりお礼申し上げます。

2013 年1 月

木村哲也
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