はじめに

動詞take に副詞off を組み合わせたtake off は「離陸する」という意味です。動詞go に前置詞over を組み合わせたgo over は「~をざっと見る,振り返る」という意味です。あるいは,break+down という字面から意味がわかりやすいbreak down(故障する)に対して,let+down という字面からは意味が読み取りにくいlet down(~をがっかりさせる)という表現もあります。こうした動詞と副詞・前置詞の定型的組み合わせを本書では句動詞(phrasalverbs)と総称します。

句動詞は一筋縄でいかない学習項目ですが,英語を話したり,書いたりする場合には,本書で取り上げる程度の頻出句動詞はぜひとも会得する必要があります。実際,ケンブリッジ英検やIELTS でも出題の範囲内です。「英文に使われる動詞の3割以上を句動詞が占める」と言われるほど,句動詞は英語の語彙の重要部分を占めているからです。シェークスピアの全作品を通して5,000 以上の句動詞が使われているぐらいで,「英語を英語らしく話す」ために不可欠と言えそうです。

また,海外TV ドラマなどを見ているとわかりますが,句動詞は話し言葉で実によく使われるうえ,E メールや雑誌・新聞の記事のようなインフォーマルな書き言葉でも頻出しますから,主要句動詞はしっかりおさえておかないと,いくら英語を勉強しても効果を実感できません。さらに,コミュニケーションないし人間関係という視点から言えば,句動詞で言うのが普通なのに,いつも一語動詞で済ませようとする人は,時間や場所におかまいなく堅苦しい格好をして取り澄ましているかのような,奇異な感じを相手に与えます。

本書は,以上の具体的ニーズを踏まえて,アメリカ英語とイギリス英語両方の5 億語を超えるコーパス(用例データベース)の研究からわかっている最頻出上位150 句動詞とそのバリエーションを合わせた,およそ400 の頻出句動詞を取り上げ,必要な句動詞を一語動詞と対照しながら,効率よく学べるよう工夫してあります。生きた英語の習得に活用してください。

2013 年9 月
日向清人
前のページに戻る