はじめに
本書は、好評をいただいているVOAリスニング・シリーズの第4弾として、VOAで最近放送されたインタビュー、討論番組に焦点を当て、テロリズムとの戦いから終末期医療まで、多彩な内容の10編を厳選して作成したリスニング教材です。
あらかじめ書かれた原稿を読み進めるのを基本とする通常のニュース放送と異なり、インタビュー番組では原稿は用意されず、当意即妙のやりとりによって話が進みます。話し手の英語も自然な英語そのものですから、言い誤りや言い直し、補足説明などが数多く含まれ、文構造が複雑になります。原稿を朗読した英語にしか慣れていない学習者にはかなり骨の折れるリスニング素材かもしれません。それだけに、英語のネイティブ・スピーカー同士、または、ネイティブ・スピーカーと外国語アクセントの強いノンネイティブ・スピーカーの自然な対話を聞き取る能力を高め、会話、スピーチ、プレゼンテーション、ディスカッション、ディベートで役立つフレーズも一緒に覚える事ができます。
ネイティブ・スピーカー同士、あるいはネイティブ・スピーカーとノンネイティブ・スピーカーの対話を聞くことのできる素材としては、洋画やテレビドラマ、ニュース番組のインタビュー、討論、座談会などがあります。これらの素材は、話し手が、聞き手の理解を確認するために行うフィードバックがないうえに、聞き手は第三者として蚊帳の外にいるために、内容が把握しづらいという二重苦があります。しかし、その半面、「何かを依頼する方法」「同意や反対意見の表し方」「不明な点を確認する方法」などのコミュニケーション・スキルを、実際の対話を聞きながら学べる大きなメリットがあります。
本書を活用すれば、このネイティブ・スピーカー同士、あるいはネイティブ・スピーカーとノンネイティブ・スピーカーの対話をたっぷりとインプットすることができます。また、英文と対訳、語句解説を載せただけの従来の教材と異なり、本書はこれまでのVOAシリーズと同様に、内容理解(comprehension)のための学習タスクを用意しており、さらにインタビューの中から有用なフレーズをピックアップして詳しく解説しています。
教材としての質を高め、少しでもユーザー・フレンドリーにするために、原稿の段階で前書同様、私が主宰する時事英語研究会(MEC:Media English Circle)で十数名の大学生(実用英語検定2級~準1級レベル)を対象に数ヶ月使用し、そこから得たフィードバックをもとに練り上げて本書を完成させました。特に最終原稿の段階では、研究会代表の新井田真行君、松野孝治君にはモニターとしてタスクに取り組んでもらい、貴重な意見をいただき感謝しております。このように本書は、現場の審査を経て評価を受けた教材ですから、安心してお使いいただけます。また、タスクおよびトラスクリプトの細部に至るまで、本書のすべての英文は、小樽商科大学言語センター准教授で言語学博士のShawn Clankie先生(米国)と北海学園大学人文学部専任講師のLorne Kirkwold先生(カナダ)に厳重に点検していただき精度を高めました。この場を借りて改めてお礼申し上げます。最後に、いつもながら本書の構成、タスクの種類についてご助言をいただいた(株)語研の奥村民夫氏に心よりお礼を申し上げます。
緑丘より春の日差し眩しい日本海を眺めて
小林敏彦