※ためし読みの色は実際の書籍とは異なります。
はじめに
言葉はよく氷山にたとえられます。氷山は水面上に出ている部分しか見えませんが、見えない水面下には残りの大きな部分があって、その水面上に出た氷山の一部を支えています。
言葉の場合、見えない水面下でその言葉を下支えしているのは言語文化です。言語文化とは、「いつ、どこで、どのように」言語表現を使うのかに関するルールとも言えますが、それぞれの言葉の言語文化はそれぞれで異なっており、英語と日本語はかなりの異言語同士であるため、お互いの言語文化はドラスティックに違います。
例えば、基本的な挨拶表現である“Hello!”と日本語の「こんにちは!」は、「いつ、どこで、どのように、なぜ」使うのかに関して違いがかなりあります。そして、この挨拶表現のからむインターアクション(意思の疎通)の行ない方も(例えばドアのノックの仕方、握手の仕方、話しの論理展開の仕方など)、英語と日本語の言語文化ではお互いに非常に異なっています。
英会話の勉強で、表面的にさまざまな英語表現を日本語訳と合わせてそのまま覚えようとするのは、水面上に出ている氷山の一角を眺めてそれが氷山のすべてだと考えるのと同じです。そして水面下では、無意識に私たちの母語である日本語の言語文化の「常識」を使い続けざるをえなくなります。
日本人の英語は海外ではなかなか通じないとよく言われます。日本語の言語文化の影響の濃い英語になりやすくなるため、英会話において誤解が生じやすくなったり、インターアクションがかなりぎこちないものになったりする傾向にあるからです。
英会話では、文型的な「正しさ」とともに英語文化をベースとした「自然さ」が重要です。本書『【完全マスター】ナチュラル英会話教本』では、後者の「英語の自然さ」にフォーカスし、「機能編」(英語表現に関して、主に「どのように」「なぜ」にフォーカス)と「場面編」(主に「いつ」「どこで」にフォーカス)の2部に分けて英語の言語文化を細かく扱ってあります。より誤解の少ない、よりカルチャーショックの少ない、意思の疎通がよりスムーズにできる英語の習得へ向けて、本書をお役に立てていただければ幸いです。
最後に、(株)語研編集部の島袋一郎氏に心より感謝の意を述べたいと思います。よりよい英語のテキスト制作に向けての「共同制作者」として理想的な方だったと思います。
セントラルミズーリ大学英語教授法修士卒,サウスカロライナ大学言語学博士課程中退。コーネル大学客員講師,トルーマン州立大学講師などを経て,現在,カプランジャパン英語講師。ジョーデンアプローチ推進協会主催(http://www.ivyleague-english.com/)。
主な著書に,『米国の日本語教育に学ぶ新英語教育』(大学教育出版 2008.7),『完全マスター英文法』(語研 2009.6)がある。
早稲田大学,ウイスコンシン大学マディソン,テキサス大学オースティン卒。外国語教育学博士(Ph.D.)。現在,青山学院大学,早稲田大学,東洋英和女学院大学講師。
ノースイーストミズーリ大学(現トルーマン州立大学)文学部英米文学科,ニューヨーク大学大学院英語教育修士課程卒。ノースイーストミズーリ大学講師,ジョージア州フルトン郡教育委員会職員を経て,現在,志門塾高校部英語講師。
コロラド州立大学人間科学部人間科学科卒,ペンシルバニア州立大学行動生物学博士課程コースワーク修了(ABD)。CDC(Centers for Disease Control and Prevention—国立疾病管理予防センター)研究員を経て,元大垣日本大学高校英語講師。