はじめに

本書は，これからスペイン語を学ぶ方，スペイン語を学び始めたばかりの方のために編まれた単語集です。基本となる504 語を選び，それぞれに実際に使用する場面を想定して例文を作りました。よく使用される語は，学習者の記憶に定着するよう，繰り返し例文で取り上げています。また，スペイン語圏に旅行した際，あるいはスペイン語話者と話す際に耳にするであろう言い回しを中心に例文を考えたことにより，初級では学習しない命令法などを使った例もあります。このような場合，注で文法的な説明を示しています。皆さんが動詞の直説法現在の活用に慣れてきた段階で，「あれ？前に見た命令の形は…」と，本書で取り上げた例文を思い出し，ご自身でスペイン語動詞の活用について考えていただけると，学習者の皆さんにとっては厄介な，スペイン語動詞の活用形について記憶に残る形で体系化できるのではないか，と思います。

スペイン語の動詞は主語の人称と数に合わせ，全ての法と時制でそれぞれ6 通りに活用します。たとえば，初級で学習する直説法現在で，主語により6 通りに活用することを知り，「すべての動詞がこのように活用するなんて，覚えられない。しかも，過去や未来など，他の時制でも違う形になるなんて…無理！」と，この段階で学習意欲が下がってしまう方は多いと思います。でも，「これだけの形を覚えなさい」と言われて覚える場合と，学習者である皆さんご自身で規則性を見つけ，覚える場合とでは，おそらく後者のほうが記憶に残りやすいのではないでしょうか。

本書には音声が附属しています。通勤・通学の際に聴いて，スペイン語のイントネーションに親しみ，昨今多く見かけるスペイン語圏からの旅行者同士の会話，また，彼らからの質問に耳を傾け，少しだけでもスペイン語で話してみることを実践していただけたらと思います。それは彼らにとっても非常に嬉しいことですし，また，皆さんのスペイン語学習へのモチベーションになるからです。

本書は皆さんがスペイン語という世界に飛び込み，ご自身でその世界を広げていただくお手伝いができるように，という思いを込めて作りました。皆さんのスペイン語圏への世界を広げることの足がかりになり，また，日本を訪問する多くのスペイン語圏の人々が日本で楽しい思い出を作れるきっかけになってくれるのであれば，これほど嬉しいことはありません。また，少しでも国境を越えた多くの人々の交流のお役に立てることを切に願っております。