イラストで記憶力を刺激しながら,周知の英単語や表現を確実にフランス語へ橋渡しする。もちろん,何もかもが似ているわけではありません。残念ながら,それなりの英単語力があっても,入門レベルですと,さしてそれは実感できません。でも,少し単語の抽象度が増すと,俄然,英仏の単語は似てきます。中学・高校レベルの英単語力でも,言うなれば,リバレッジ leverage が効くわけです。
ー「はじめに」より
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※ためし読みの色は実際の書籍とは異なります。
はじめに
こんな経験があります。フランス語初級の2回目の講義で,私が基本的な仏単語をいくつか黒板に列記したときのこと。R 大学の学生Diego 君(スペイン語が母語で,日本語も流暢な学生です)が,不意に立ちあがり,興奮した様子で言ったのです。
「先生……,ぼく,フランス語の単語がほとんどわかります」教室内はざわつきました。“ そりゃ,君の母語と同じロマンス語系だからね”,そんな返事をしたら身も蓋もない。「そうか,そりゃすごいな!」,教室内の興奮に波長を合わせそう応じました。
実は,英語とフランス語の間でも同じことが起こります。それを具体的に明らかにしたのが本書です。イラストで記憶力を刺激しながら,周知の英単語や表現を確実にフランス語へ橋渡しする。もちろん,何もかもが似ているわけではありません。残念ながら,それなりの英単語力があっても,入門レベルですと,さしてそれは実感できません(Diego 君は例外です)。でも,少し単語の抽象度が増すと,俄然,英仏の単語は似てきます。中学・高校レベルの英単語力でも,言うなれば,リバレッジ leverage が効くわけです。
たとえば,次の例。
- Le Kabuki est une forme de théâtre classique japonais.
- Kabuki is a form of classical Japanese theatre.
あるいは,抽象度が上がったこんな例文。
- La compétence linguistique est un concept que Chomsky a utilisé dans sa grammaire générative.
- Linguistic competence is a concept that Chomsky used in his generative grammar.
誤解している向きもあるようですが,フランス語の語彙学習はゼロからの丸暗記ではありません。学習前から,私たちは相当数の単語を英語ベースで知っています。それもそのはず,英語の多くの語がフランス語経由なのですから。それを実感いただけるよう見出し語の頻度も勘案しつつ,この一冊を書きました。「あっ! フランス語の単語が自然に頭に入ってくる!」,そう実感できる方が一人でも多く現れることを願いながら。
東京生まれ。現在、明治大学商学部教授。元・NHK ラジオ「まいにちフランス語(初級編)」講師。これまでに『英語がわかればフランス語はできる!』、『(バイリンガル叢書)英語・フランス語どちらも話せる[ 基礎エクササイズ篇]・[ 増強エクササイズ篇]』、『仏英日例文辞典 POLYGLOTTE』、『NewMap in Basic English and French』(以上は単著)、『基本フランス語表現記憶辞典 INTRODICTION』(共著)等、駿河台出版社やIBC パブリッシングなどから、英語とフランス語を比較対照するオリジナル作品を複数世に送り出している。